創業物語 プロフィール
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  第46話    「500万円出しましょう!」 2001/6/25  
またまた引き続き1997年10月下旬。

若手起業家の支援をライフワークとされているKさん(お名前を出す承諾をい
ただいていないのでKさんとします)の事務所を、オプトの鉢嶺さんと一緒に
訪れたのでした。

釘 : 「鉢嶺さん、ほんとーにその方は、何の面識もないボクなんかに資金を提供
      して下さるものなんですかねー?」

鉢 : 「それは釘崎さん次第だと思いますよ。しっかりとした理念と事業プランを
      説明できれば、良い方向に話は進むと思いますが…

釘 : 「し・しっかりとした『事業プラン』で・す・か…」

ボクがこの日用意していたのは、友人に出資をお願いするときに作っていた、
「事業計画書」と呼ぶにはあまりに厚かましいA4用紙2枚の「紙切れ」だっ
たのです。

(えーい!ともあれ、あたって砕けろだ!)

なかば開き直りつつ、高田馬場にある事務所に到着したボクと鉢嶺さんは、K
さんの部屋に通されたのでした。

Kさん : 「やー、鉢嶺社長、よくいらっしゃいました。あー、この方が例の就職
           情報のビジネスでの起業を考えておられる方ですね」

釘 : 「ど・どうも初めまして。クギサキと申します」

Kさんはとても背が高く、体格もよく、高そうなダブルのスーツをキチッと着
こなしており、
しゃべり方もとても紳士的で、表情も極めて柔和なのですが、風格というか威
厳が漂っており、「んー、タダモノではない…」というのが一目で見て取
れる、そんな方でした。

鉢嶺さんから後に聞いたところ、この方は数年前、自分でゼロから興した不動
産関係の会社を株式公開し、その時に得た創業者利益(株の譲渡益)を資金に
してベンチャーキャピタルを運営しているとのこと。

しかし、Kさんが株式公開したその会社は、複雑な事情で、会社更生法を申請
→ 某大企業の傘下 → 自身は役員退任…、という大きな挫折を経験した方で
もあったのです。

そんなこともあって、今後は自分が経済界の表舞台に立つのではなく、有望な
若手起業家を発掘し支援していくことを、自分の使命とされていたのでした。


ボクはこの時、そんな細かい事情は一切知らず、ただただ出資を仰ぐことだけ
に神経を集中させていました。


Kさん : 「さて、それじゃあクギサキさん、あなたの考えておられる事業プラン
           をお聞かせ願えますか?」

ボクは手元にあるたった2枚の「紙切れ」を使いながら、身振り・手振り・口
からはツバを飛ばしながら、自分の考えている就職情報ビジネスについて30
分ほど語りました。

Kさんは、ボクが一通りの説明を終えた後も表情を変えずに、しばらくじっと
2枚の紙切れを眺めていました。

Kさん : 「それで、会社を作るために、あといくら必要なんですか?」

この時集まっていたお金が、自分の出資分も入れて約400万円。
あと100万円くらいは、これから会う友人や知人で、なんとかなるだろう。
とすれば、会社設立までに必要な残額は…。

釘 : 「ご・500万円です」

Kさん : 「わかりました。出資させていただきましょう」

釘 : 「え!ほ・ほんとですか?」

Kさん : 「もちろんです。がんばりましょう!」

Kさんはスクッと立ち上がり、ボクに握手を求めてきました。
ボクは、一瞬なんだかよく分からない感じだったのですが…。

釘 : 「あ・ありがとうございます!!!」

と次の瞬間には握手に応じていたのでした。

お会いしてから30分しか経過していないのに、500万円の商談(?)が
成立した瞬間でした。

Kさんは後に、

「いやー、しかし、よく私もあんな紙切れ2枚の事業計画に、しかも初めて
  会った人に対して、出資の判断をしたものだと思いますよ…。
  まー、クギサキさんの会社が将来成功したら、美談になるんでしょうね」

と冗談交じりで仰っていましたが…。

ともあれ、これで会社設立まであと一歩。
ムライさんからそそのかされた夜から数えて、まだ2週間しか経過していない
のに…。こんなに簡単にコトが運んでいっていいのだろうか…。

すべてがトントン拍子に進んでいくことに、逆にちょっと怖ささえ感じられた
秋晴れの日でした。

                  (次回、何か波乱でもあるのかな?…つづく)

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