釘さんの100の出会い プロフィール
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  <第144話> 「竹とんぼ屋の國(クニ)さん」   2007/10/15  
 
新卒で入社してきた社員との出会いがしばらく続いたが、ちょっと中断して、 パフのことを社外から応援してくださっている方々のことを、これから何回か に分けて書いていこうと思う。

きょう紹介させてもらうのは、通称“國(クニ)さん”こと、國貞克則さんだ。

クニさんは、僕と同学年。もともとは日本を代表する大手鉄鋼会社の技術者と して社会人のスタートを切ったのだが、その後、会社の人事や、経営企画や、 はたまた米国に留学して(経営学の大家として有名な)ドラッカー教授のもと でMBAを取得するなど、異色の経歴を持つ。

そしてさらに異色なのは、6年前に会社を辞め、『竹とんぼ屋』を開業したこ とだ。

実は『竹とんぼ屋』というのは、世を忍ぶ仮の姿であり、中小企業の社長を対 象とした『経営コンサルタント』というのが、現在のクニさんの本業だ。

僕とクニさんが出会ったのは、クニさんが独立して2年ほど経ったころ。今か ら丸4年前のことだ。

クニさんとは最初に会ったときから、なんだか惹かれ合うものがあった。

なんと表現すればいいのだろう……。そう、クニさんは、謙虚で、奥ゆかしく て、飾らない誠実な人柄である一方で、物事を見る目がとても厳しい。それが ホンモノなのか偽者なのかを、即座に見分けてしまう鋭さを併せ持つ。そして いざというときには、曖昧さを許容せず、きっちりと一刀両断にする力強さを 持っているのが、クニさんという人だ。

パフの仕事に関わるようになったのは、僕と出会った直後に、パフの若手社員 たちを対象とした研修(というより講話かな?)を、手弁当でやってもらった のが最初だった。

クニさんから発せられる本質的なメッセージの数々。「仕事とは」「働くとは」 「会社とは」「人間とは」等など……。パフの若い社員たちは、たちまちクニ さんのファンになっていった。

社員たちが惹かれたのは、本質的なメッセージに対してだけではない。これら メッセージを発信している、クニさんの全人格に対して惹かれていったのだと 思う。

「全人格に惹かれた」などと書くと、神様のような人だと思われてしまうので (そしてそれは、クニさんにとっても不本意なことだと思うので)補足すると、 まったくそうではない。

自分自身の弱さや、ズルさや、至らなさを隠そうとしないクニさんに惹かれた のである。一見経歴だけ見るとエリートのように思われてしまうクニさんだが、 実は、挫折や悩みや失敗の連続だったという。そんな自分の人生を、若い社員 と同じ目の高さで飾らずに話してくれる誠実な姿に惹かれたのだ。

いま書いていて思ったのだが、僕自身が当初惹かれたのも、クニさんのそうい う部分だったのだろう。

クニさんにはその後、パフの新入社員研修でお世話になったり、パフのサイト やメルマガに連載されているコラムでお世話になっている。

この連載コラムなのだが、毎年、学生だけではなく、多方面から絶大なる支持 をいただいている。コラムのタイトルだけ見ても、いかにもクニさんらしいコ ラムなのだ。【自分らしく生きる】【生きる力】【人間力】。この3年間で連 載してもらったコラムだが、いずれも読み応え十分のコラムとなっている。

最近では、僕の「経営」という仕事にも、たくさんの助言をいただいている。 その助言には、「仲がいいから」とか、「仕事をいただいているから」などと いう生ぬるさはない。時に厳しく、胸をえぐられるような助言をいただくこと も多い。だからこそ僕は、クニさんを信頼し、信用できるのだ。

つい先日、千葉県の印旛村にあるクニさんのご自宅に、僕やパフの社員をご招 待いただいた。そして、大バーベキュー大会を催していただいた。

休日であったにもかかわらず、「遠慮」というコトバを知らない大勢の社員た ちが参加。この日のために米沢から取り寄せたという大量かつ高級な霜降り肉 を、いっぺんにたいらげてしまった。一年分のコラムの原稿料が、軽くふっと んでしまったのではないかと心配になったくらいである(苦笑)。

書きたいことがたくさんあるのだが、最後にひとつだけ。

クニさんが最近書いた本がバカ売れしている。『財務3表一体理解法』(朝日 新書)という本なのだが、これがとても分かりやすい。

クニさんは会計の専門家ではない。なのに、なぜこのような会計の専門書を書 いたのか。

クニさんが顧問をしている、ある中小企業の社長は決算書を読むのが苦手だっ た。しかし決算書を読めないと、銀行との交渉を有利に運ぶことが出来ない。 なんとかしたいとクニさんは思った。そうしなければ、この会社は、いざとい うときに大変なことになってしまうからだ。

そしてクニさんは、独自に決算書の理解法を編み出した。従来の会計の専門家 にはなかった発想法である。この手法を、クニさんがビジネススクールで教え ていたら、たまたまその評判を聞きつけた出版社の人が、本にしてみないかと 持ちかけた。勧められるままに書いてみたら、なんと売れてしまった、という のである。

「本を売るために」とか「お金儲けをするために」という目的ではなく、ただ 目の前にいる人(顧問先の中小企業の社長)の役に立ちたいという一心で編み 出した手法が、たまたま本になったことで、今では何万人もの読者の役に立ち、 結果として、クニさんの収入にも大きく貢献し、クニさんのご家族を(たぶん) 幸せにしている。まさにクニさんの生き方を表しているエピソードではないだ ろうか。

僕は、これからもますますクニさんと、パフとしても、イチ個人としても、お 付き合いを深く長く続けていくことになるであろう。僕が裃を脱いで相談をす ることができる、40歳を過ぎて知り合った数少ない友人である。

ということで95番目の出会い。クニさんこと、國貞克則さんとの出会いでした。
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