自転車操業物語 プロフィール
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  第73話    「内定者お披露目会の世は更けて……」    
引き続き2000年8月2日の夜。

パフ新卒一期生を協賛企業の皆さんに紹介すべく催した「内定者お披露目会」。

内定者ひとりひとりの自己紹介&一発芸の披露を行う時間になった。


実は内定者にはあらかじめ、「お披露目会では、みんなに芸を披露してもら
うからね。とびっきりのやつを準備しといてね」と言っておいたのだ。



トップバッターは、ササキアサヒ。

彼は、2人組みのバンドを組んでおり、たまにライブをやったりしていると
いう。いわば「セミプロ」だ。

当然、披露の芸は「唄」。
この日のために、フォークギターを担いできており、弦を掻きむしりながら、
甲高い声で歌い始めた。たしか「ゆず」の唄だったと思う。

さすがにライブ活動をやっているだけあって、なかなか上手い。
企業の皆さん一同、「ほーっ、なかなかやるじゃない」という拍手が起こった。



セカンドバッターは、フルカワアキコ。

彼女は、大阪から2日前に出てきたばかりであったが、この日のお披露目の
ために、わざわざ、ある楽器を抱えてきていた。

ある楽器とは……。

「沖縄三線(サンシン)」である。蛇皮線とも言う。ヘビの皮で作られた、
沖縄の伝統的な楽器である。外見は三味線に似ているのだが、音色はとても
独特なものがある。

フルカワは、民俗学を専攻していたこともあり、この三線が好きになり、
つい最近購入したのだという。

三線を抱えて、座敷に正座し、演奏が始まった。曲は「島唄」だ。

決して上手ではないが、三線の独特な響きで、皆しんみりと聞き入っていた。

演奏が終ると、皆さんからは、アサヒの唄以上の拍手喝采だった。



そして…ラストバッターは、ヨシカワアユ。

他の2人が、大きな拍手をもらっていたので、かなりの焦りを出番直前まで
感じていたようだ。

しかし、皆の前に出たときの彼女は、すでに開き直っていた。

ヨシカワは、前に出ると、おもむろに割り箸を手に取った。

左手に割り箸をギュッと持つ。そして次の瞬間、その手をパッと開く。
普通なら、割り箸は落下するはずなのだが、なぜか落ちない。

何のことはない、添えた右手で見えないように箸を支えているのだ。昔から
よくある子供の手品だ……と、皆思った。

が、また次の瞬間。
支えていると思っていた右手も離した。
箸は落ちない。


「おぉーーー。どうやってるんだぁ??」


どよめきが起こった。ヨシカワは、「してやったり」という表情だった。

#タネを明かすと何のことはない。腕時計に、箸を挟んでいただけなのだが。



…こんな感じで内定者全員の一発芸は終了し、宴会は一気に盛り上がっ
ていった。

内定者の3名は、企業の皆さんからそれぞれに、熱い激励の言葉をもらった。

内定をもらった直後から、これほど取引先から期待され、激励を受けること
のできる学生なんて、滅多にいないだろう。実に恵まれた内定者である。


夜10時を回っていたであろうか。十分な盛り上がりを見せた内定者お披露
目会は、終了した。



さぁ、明日から、いよいよパフの正式スタッフとしての戦闘開始だ。

「2002年度新卒採用」に向けた、新たな「職サークル協賛企業」を見つ
けるための営業活動を、急ピッチで進めなければならない。


研修を終えたとはいえ、この営業活動が、どれだけ大変なものであるかを、
彼らはまだ知らなかった(研修に参加できなかったササキタカノリは、なお
さらのことだった)。

(さて、どのような営業が開始されることやら…つづく)

 
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