自転車操業物語 プロフィール
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  第57話    「忍び寄る悪魔たち、その5」    
2000年3月初旬。

総額で数千万円規模の出資をしてくれるという安定株主を紹介してくれると
いうST社。

しかもST社への謝礼は、成功報酬でいいという。つまり、株主とのマッチ
ングが出来たら、その出資額に応じて支払ってくれればいいというもの。

しかし……。
株主にパフを紹介・プレゼンするための「事業計画書」は、有料でなければ
作れないという。

たしかに、すべてを成功報酬で…というのでは、リスクを全部相手に負わせ
るということなので、それくらい(事業計画書作成費くらい)は、仕方ない
と思っていた。

「でも200万円は、高い、というより痛いなぁ」
というのが正直なボクの気持ちだった。


ともあれ。

2週間の時間を経て、ST社作成の事業計画書が出来上がってきた。

この事業計画書、見た目はキレイなのだが、なんだか味気ない。
「これがパフだっけ?」といった感じである。

数字による説明が中心で、いわゆる「ハート」が感じられない。

「まぁ投資家が出資を判断する資料だからしょうがないかな」とボクは、
割り切るようにしていた。



さて、いよいよST社の投資家とのマッチング活動が始まった…はずだった。

しかし!
なかなかST社から報告が来ない。どうしたんだろう?
ST社の担当者に連絡してみたところ、「かなり苦戦しています…」
との返事が返ってくる。

話が違う!いとも簡単に、投資家を紹介できると言ったではないか!

一方で、増資の締め切りは刻々と近づいていた。
増資の期日は、総会や取締役会の決議で決められており、この期日までに増
資ができなければ無効になってしまうのだ。


その期日3日前。やっと、ひとりの投資家を紹介してもらうことになった。

ST社「やっぱり釘崎さんが直接プレゼンしたほうがいいでしょう」

ということで、ボクが直接プレゼンしにいった。
が、結果は“×”。
パフの事業規模、収益性では、投資することはできないという。


●ST社 : 「いやぁ、釘崎さん、申し訳ない。やはり御社の事業内容だと、投
資家にアピールするのが、ちょっと難しかったみたいですね」

(この野郎!だったら、最初っからそう言え!)

気がかりだったのは、「事業計画書」の作成費用。

総額200万円のうち、25%の50万円を先払いしていた。

●ST社 : 「事業計画書作成費の未納分は、いただくわけにはいかないです
よね?」

◆クギ : 「はい。そうですね、勘弁してください。まぁこれに懲りずに、今後
もいい投資家さんとか、あるいはパフのお客さんとなるような会社が
あれば、紹介してください」

内心は、(あたり前だ!先払いの50万円も返して欲しいくらいだ!)と
思っていたが、グッとコトバを飲み込んだ。


まいったな…。手持ち資金を増やすどころか、逆に減らすことになっちまっ
た。世の中うまい話など、ないもんだ。

ちなみに、このST社からは、その後一切連絡がない。

「忍び寄る悪魔」と呼ぶのは、ちょっと可哀想だが、このような不義理な会
社を側に呼び寄せてしまった自分が情けないと、今でも思っている。

(ところで引越し費用は大丈夫なんですか?…つづく)

 
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