創業物語 プロフィール
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  第24話    「釘ちゃん、SEやってくんないか?」 2001/1/14  
1984年4月。
大学を正式に卒業したボクは、S社の正式な新入社員、しかもその会社にとっ
ての新卒1号社員として迎えられました。

ボクのその会社での一番のミッションは、優秀な人材を新卒、中途を問わず採
用すること。
これは、リクルートでの経験もあり、ほどほどの自信(自惚れ)がありました。

しかし、二番目のミッション。
これによって、ボクはそれまで体験したことのなかった、恐怖、数々の絶体絶
命状態を味わうことになるのでした。

それは入社直前の時期に交わした、S社の社長との会話から始まったのであり
ます。

……

社長 : 「釘ちゃんさ、もちろん採用の仕事は、釘ちゃんが専門家だから、これ
          から全部、釘ちゃんにまかすよ」

ボク : 「はい、まっかせてください!エッヘン!」

社長 : 「でもね、釘ちゃん。うちの会社ってコンピュータの会社なんだよね」

ボク : 「そんなの知ってますよ、なーに今ごろ言ってんすか。ハハハ」

社長 : 「うん。採用の仕事っていうのも大事なんだけど、忙しいのはごく一時期
          だけでしょ?」

ボク : 「は?はぁ…」

社長 : 「今ね、うちはとっても人手不足でね、SEが一人でも欲しいのよ」

ボク : 「ちょ、ちょっと…。ま、まさか…」

社長 : 「釘ちゃん!釘ちゃんもSEやってくんない?頼むよ!」

ボク : 「え゛ーーーーーーー!!!!そ・そんな!どっひゃー!!!」

……

と、まぁ、面白く脚色するとこんな感じのやりとりがありまして、薄々覚悟
はしていたのですが、コンピュータなどとは全く無縁であったボクがSEへ
の道を歩まざるをえないことになったのでした。

しかし!
ボクは高校2年までは理系進学コースだったものの、あまりの数学と物理の
成績の悪さに、担任教師から文系コースに変更させられたほどの筋金入りの
文系人間。

しかも!
ボクは機械音痴、文明音痴の、超ぶっ器用人間であり、パソコンやワープロ
すらなかった(やっと出回ってきたのがこの頃)時代に「コンピュータ」な
んぞ、絶対関わりになるはずはない!と思っていたほどなのです。

ところが…、入社後はSEになるための勉強をやらねばならぬ。

4月の入社直後から、
「ビット」だの「バイト」だの「16進数」だの「フローチャート」だの
「アセンブラ」だの「フォートラン」だの「レジスタ」だの「メモリ」だの
…。まったく訳の分からない言葉と闘うことに。

当時はマイクロソフトの「MS-DOS」のマニュアルも、英文のものしか
なく、その翻訳までやることに。

毎日、脂汗が吹き出る始末でした。

しかし、そんな泣きゴトを言っている場合ではない状況がすぐに訪れたので
した。

……

社長 : 「釘ちゃんさ、今度、人の紹介で新しく取り引きしてもらえる会社が
         できたんだ。上場している大手計測制御メーカーで、T社っていうんだ」

ボク : 「おー、良かったですねー。おめでとうございます!」

社長 : 「うん、それでね。すぐにパソコンを使った制御プログラムの開発の
         仕事をやって欲しい、って言われてるんだけど…。
         ほら、いまみんな他の仕事が火の車で誰もいないでしょ…」

ボク : 「(不吉な予感を体一杯に感じながら)…」

社長 : 「釘ちゃん、明日先方の技術者と打ち合わせしてきてくんない?」

ボク : 「ま・ま・ま・まじですか!?」


この日を境に、ボクは、対外的には、入社2年目のプログラマーということ
に…。
リクルート時代に続いて2年連続の経歴詐称を行うことになったのでした。

                                        (このうそつき!…つづく)

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