釘さんの100の出会い プロフィール
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  <第49話> 「求人票で出会った文具デザイン会社 (前編) 」   2005/10/31  
 
1983年の初夏。リクルートでの営業の仕事もこなれてきた頃だった。毎日
毎日、新規見込み客との素敵な出会いを求めて、チャリンコで神田の街をさま
よっていた。

当時のリクルート神田営業所のテリトリーは、郵便番号101の住所に本社が
ある会社。「東京都千代田区神田○○町」という地域に限定されていたので、
会社年鑑などに掲載されている「ありきたりの会社」は、もうほとんど食い荒
らされていた。

僕の売上目標金額はクオーター(3ヶ月)で約1千万円。そのすべてを「未だ
見ぬ新規企業」からあげなければならない。僕以外に新規営業をやっていたの
は計4名。皆、四苦八苦しながら新規の営業先を見つける工夫をしていた。

ビル一棟一棟をしらみつぶしに飛び込む奴もいた。ネタ本となる他社の情報誌
や新聞を誰よりも先に入手するために、本や新聞が売店に配送される前夜、印
刷所や製本所に忍び込む奴もいた。

僕はどうやっていたかというと、自分の母校の就職課に忍び込み、求人ファイ
ルを片っ端から書き写して、独自のアタックリストを作成していた。

大学に求人票を送ってくる会社だから100%新卒採用のニーズのある会社で
ある。「新卒採用なんて考えてないよ!ガチャッ!」という非情な断られ方を
する可能性が低い。しかも、会社年鑑には載ってない会社も結構あったのだ。

僕は一週間に一回、母校の就職課の資料室で、新規に送られてきた求人票を一
生懸命書き写していた。

就職課の職員に「キミはいつも一生懸命だねぇ…。就職活動うまくいってない
の?ゼミはどこにも入ってないのかな?相談に乗ってあげようか?」などと声
をかけられてしまったのは、ちょっと想定外だったが……。

その日は、いつものように朝から大学で求人ファイルを漁っていた。しかし、
新規の求人票はほとんど届いておらず、唯一あった「N企画」という会社の情
報だけ書き写して早々に営業所に引き返した。

そして営業所の席につくやいなやダメモトで、そのN企画に電話をかけてみた。

すると女性の声で…。

「え、新卒採用の企画ですか? ぜひお話をお聞きしたいです。実は困ってい
たんです。すぐにお願いできますか?楽しみにお待ちしております!!」

お、おおおおぉう!絵に描いたような、このうえない反応。

「じゃ、じゃぁ今からすぐお邪魔します!」。僕は、ウキウキ・ドキドキ・ ワクワクで、その会社に向かったのだった。
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