自転車操業物語 プロフィール
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  第54話    「忍び寄る悪魔たち、その2」    
前回にひきつづき2000年1月中旬~下旬。

飛び込みで、パフへの出資を申し出てきたSI社とボクとの会話。

■ボク : 「ベンチャーキャピタルが飛び込みとは珍しいですねー?」

●S I  : 「はい、まさに今の世の中は、スピードと機動力ですから。有望な企
業を見つけたら、一秒でも早く駆けつけるのが私どものモットーです」

■ボク : 「はぁ、そうですか……。ところで、どうしてうちの会社に来たんで
すか?出資対象となるような会社じゃないですよ。他のベンチャー
キャピタルもよく来てましたが、2度以上は来ないですしね(苦笑)」

●S I  : 「いや、そんなことはないです。我々が独自に調査した結果、御社は、
十分な出資対象です。1000万円はすぐにでもご用意させていただき
ます」

■ボク : 「ほぉー」

●S I  : 「来週にでも、うちの社長に会ってもらいたいのですが、そこでうま
くいけば、即決で1000万円~3000万円の出資を決定します」


どう考えてもおかしい。
パフが成長著しい事業内容で、売上げもグングン伸ばしているのなら、まだ
話はわかる。

しかし、当時のパフの売上げは、地を這うような数字だったし、利益などは
地を這うどころか、地中奥深く潜り込んでいたのだ。

いかに世の中「ネットバブル」とはいえ、そんなパフにいきなり3000万円の
出資を即決で行うとは、どう考えても普通ではない。


■ボク : 「3000万円出していただくのはありがたいんですが、何か条件でもあ
るんですか?」

●S I  : 「いや、そんなものはありません。まぁ強いて言えば、出資を受けて
いただいた後は、私どもが用意する経営サポートを利用していただ
くくらいでしょうか」

■ボク : 「経営サポート?なんですか、そりゃ」

●S I  : 「はい。税理士、会計士、弁護士で構成される組織で、投資先へのサ
ポート業務を行っているんです」

■ボク : 「いや、うちには税理士も会計士も、すでに頼んでいる人がいますか
ら必要ありません。弁護士も知り合いがいるし…」

●S I  : 「その人たちとの契約は、解約してもらうことになります」

■ボク : 「え!?」

●S I  : 「ルールですから」

■ボク : 「いくらかかるんですか?その経営サポートとやらは?」

●S I  : 「はい。年会制になっていまして、1000万円/年です」

■ボク : 「なにー!?1000万円??」

●S I  : 「月々わずか100万円弱ですよ」

■ボク : 「いまは税理士、会計士費用は、毎月5万円程度です。20分の1で
済んでいます。そちらに切り替える必要など、まったくない」

●S I  : 「そうすると出資もできませんよ」


なんて横暴なヤツだ。ボクは、だんだんアタマにきていた。


■ボク : 「出資を受けたとしても、1000万円もって行かれたんじゃ、何の意味
もないでしょ?しかも1年で1000万円ということは、3年で3000万
円。しかもオタクは、大株主になるわけですから、経営にいつでも
口出しできるわけでしょ?いったいウチに、どんなメリットがあるっ
ていうんですか!?」

●S I  : 「メリットはありますよ。うちの親会社SI社から出資された企業と
して、企業イメージが格段にあがります。取引先にも安心されます
よ」

■ボク : 「……」

あきれてものが言えない、とはこのことだ。
今にして思えば、ネットバブルを演出したSI社ならではの物言いだ。
勘違いはなはだしい。

■ボク : 「ウチは出資していただかなくとも結構です。
どうぞお引取りください」

●S I  : 「え?本当にいいんですか?今断れば、もう2度とSI社からの出資
を受けることはできませんよ」

■ボク : 「結構です。どうぞ帰ってください」

とっとと帰りやがれ!このスットコドッコイ!と言いたかったくらいだ。


あとで分かったことだが、このSI社、同様のトークで、目ぼしいベンチャ
ー企業、手当たり次第に声をかけまくっていたらしい。

まったく油断もスキもあったもんじゃない。目先の金にだまされるところだ
った。

しかし、一難去ってまた一難。
また別の悪魔が、ボクのもとに忍び寄ろうとしていたのだった。

(今度は、だまされる?…つづく)

 
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