自転車操業物語 プロフィール
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  第53話    「忍び寄る悪魔たち、その1」    
2000年1月中旬〜下旬。

事務所移転と新卒採用を決心したボクは、なんとかそのための資金を調達し
ようと画策していた。

しかし、売上はさほどなく、債務超過スレスレ状態にあるパフに対して銀行
は見向きもしない。東京都の制度融資を通して、わずかながらの融資を受け
られるくらいだった。

そんな中、一部の株式市場は、一種異様な盛り上がりを見せていた。
いわゆる「ネットバブル」というやつだ。

東証マザーズやナスダックジャパンといった、ベンチャー企業向けの新興市
場が開設されたのもこの頃。

設立間もない、売上も利益もあがっていない会社でも、上場できる市場が出
てきたのだ。特に「ネットベンチャー」「ITベンチャー」と称される会社
には、熱い視線が注がれていた。

ボクは、パフのことを「ネットベンチャー」だなどと一度も思ったことはな
かったのだが、日本証券業協会に届け出ている会社情報には、「インターネ
ット就職情報会社」と記載されていたため、多くのベンチャーキャピタルか
らコンタクトを受けることが多くなっていた。

しかし、接触は多くても、1社(R社)がほぼ独占する新卒就職情報ビジネ
ス市場では成長期待が持てないということで、大抵のベンチャーキャピタ
ルは、静かに身を引いていった。

「ふん!出資できないんなら、最初っから来るんじゃない!」

ボクは、やや憤慨していた。

そんな折、あるベンチャーキャピタルが「飛び込み」でやってきた。
事務機や人材派遣のセールスじゃあるまいし、ベンチャーキャピタルの飛び
込みというのも珍しい。

このベンチャーキャピタルとは、ネットバブルの生みの親、といっても過言
ではないS社の関連会社、SI社だった。


■ボク : 「ベンチャーキャピタルが飛び込みとは珍しいですねー?」

●S I  : 「はい、まさに今の世の中は、スピードと機動力ですから。
            有望な企業を見つけたら、一秒でも早く駆けつけるのが私ども
            のモットーです」

■ボク : 「はぁ、そうですか…。ところで、どうしてうちの会社に来たんで
            すか?出資対象となるような会社じゃないですよ。他のベンチャー
            キャピタルもよく来てましたが、2度以上は来ないですしね(苦笑)」

●S I  : 「いや、そんなことはないです。我々が独自に調査した結果、御社は、
            十分な出資対象です。1000万円はすぐにでもご用意させていただき
            ます」

■ボク : 「ほぉー」

●S I  : 「来週にでも、うちの社長に会ってもらいたいのですが、そこでうま
            くいけば、即決で1000万円〜3000万円の出資を決定します」


な、なにー?3000万円即決だと?なんなんだ、こいつは??

相当に胡散臭さを感じつつも、3000万円を散らつかされた瞬間、ボクは、少
しずつだが心が動きはじめていた。

(だ、だまされるなよ!…つづく)

 
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