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スタッフコラム

内々定と内定と内定承諾の関係 ~人事も学生も考えるべきこと

作成日:2023.3.23

こんにちは。元人事、現在は何でも屋のミスターDです。

今回は釣りの例え無しでいこうと思います。私は毎年、100人くらいの大学生のキャリア面談をやります。それが多いか少ないかですが、過去の人事若手時代は「書類選考・適性検査選考無しで全員面接」を採用スタイルにしており30人採用で3000人ほどを一次面接、自分はそのうち1000人ほどの面接(集団面接込み)を実施していましたので、それに比べれば少ないとはいえます。しかし、キャリア面談は1人あたり延べ3時間くらい行う為、年300時間は実施している感じです。面接と比べて、ひとりひとりに合わせた話をする分、時間以上に大変さもありますね。

とはいえ、何のために面談をするのか、は当然ながら学生の為。大変とか、そんな次元で考えてはいけないです。毎年「Dさん、相談に乗ってください」という依頼をいただくのですが、その内容は就活時期によって異なります。学部3年~4年になる頃を例にすると

3年夏:「就活って何からやるべきですか、インターンシップやった方が良いですか」


3年秋:「インターンシップ疲れました、自己分析ってどうしたらいいですか」


3年冬:「面接の深堀質問どうしたらいいですか、面接対策の相談お願いします」


4年春:「内定承諾ってどうなるんですか、労働条件ってどう見ればいいのですか」


多くはこういう分類になります。



そんな季節感からいきますと、今は内定に関する相談ごとが多い時期です。そしてここには企業側も、学生側もハラハラしているであろう「内々定」「内定」「承諾」という単語が出てきます。よく「内定承諾後に辞退なんて」とか「行く気がないのになぜ承諾するの」という企業側の意見も目にしますが、今回は学生側の目線で語ろうと思います。

「Dさん、実はいま選考中の企業から【最終面接段階】で『当社に来ると約束する(承諾する)なら内々定を通知するよ』と言われています。他にも選考中で最終面接や最終の少し前の会社があって、自分としては全部結果を出してから考えたいのですが、就活を止める約束で内々定をもらうべきでしょうか」と相談を受けるわけです。



この答え、貴方ならどう伝えますか? 当然、巷には「承諾後の辞退は法的には可能」「授受したものがある場合は返却や損害賠償責任を負う可能性がある」って情報はあふれているので、その辺は学生も「見りゃ分かる」として。私が答えるとしたら「承諾以外無いよね」です。だって、就活はやり切りたい、でもこの内定をくれる会社にも入りたい気持ちがあって、ここで辞退したら、他の会社に受かる保証もない。だから答えは明確だと思います。そして、その決断をする学生に否はあるのか=無い、と思っています。一回約束して反故にするなんてモラルが無い、と言えばそうでしょう。

でもね、そもそも考えてみてください。企業側は状況ヒアリングをしているはずです(していないなら、それもどうかですが)。その中で内定というカードをちらつかせ「駆け引き」を仕掛けている訳ですよね。駆け引きで来るなら、法令違反でもないのだったら、駆け引きで切り返すことに躊躇することはないですよね。「裏切者」とか「嘘つき」とかの罵声は浴びるかもですが、そういう選択をさせたのは企業側にあると思うからです。雇用側が求職者より強いのは事実でしょうけど、新卒採用の「内定無しが怖い学生」に内定カードをちらつかせる手法は、やるべきではないと思います。中途採用なら別ですよ、今いる会社と比較して、業務内容、条件を踏まえて「いまこの場で来るかどうか決断せよ」だとしても、求職者も決断できますからね。

 

ということで、新卒採用での学生の承諾後辞退に関して色々言うなら、先ずは企業側がしっかりしたアプローチをしてからであるべき、という話ですね。もちろん、学生側も内定コレクターみたいに「5社ほど今内定をもらっていまして」なんてことを言う学生には「それって、何か意味あるの?自分が優秀とでも? 「いいね」じゃないんだから、1社でいいんだよ、内定は」ということは言いますし、行く気も無い企業の内定を保留したり、承諾するのは言語道断であることを徹底して伝えています。

 

以前はこの「内定カードで承諾させる手法」を出せば、学生がビビって「承諾しなきゃヤバい」となったかもですが、以前と違って内々定と内定の違いや、法的見解なども全部WEB上に記載されていますから、学生も自分で検索し「なんだ、法的には平気じゃん、とりあえず承諾でいいわ」ともなりがちです。でもね、そんな学生もあるべき姿じゃないんです。だからこそ企業側が最初からFAIRなスタンスで、学生ひとりひとりの状況や考えをしっかり聞き取ったうえで、双方が本気で決断できるステップを踏んで欲しいと思います。「今時の学生は~」なんて嘆く前に、自社採用の足下をしっかり見てほしいです。こんなこと書くと「お前も元人事だったら採用数のコントロールがどれくらい大事か分かるだろう」という意見もあるでしょう。そりゃそう、人件費予算もあれば、新入社員がもたらす売上向上面もありますしね。しかし「1人の無垢な学生が、夢を持って仕事を考え、選択する場面」であることを考えれば「そんなの関係ねえ」で終わり。

懐の深い採用を目指して


直面している時って、学生も「どうしよう」って悩んで相談に来るんですけど、だいたいは後で「何であの時ビビったんでしょうね、あの会社は了見が狭い会社だって気づきました」ってパターンが多いので、人事の皆さんは「やっぱり会社って、社会人って懐が深いよね」って思われるアプローチをしてほしいですし、より良い新卒採用を雇用側が考えたいものですね。

 
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