努力し続けるという才能 ~ 才能は「優劣」ではなく「再現性」で考えてみる
作成日:2025.12.18
「あなたの才能は何ですか?」
採用の現場にいると、この問いに対して学生も社会人も、少し身構えた表情をすることが多いです。理由はシンプルで、多くの人が「才能=他人より優れているもの」だと思っているから。
運動神経がいい。
頭の回転が速い。
センスがある。
誰にも真似できない強みがある。
確かに、それも才能の一つでしょう。ただ、採用や育成の文脈で考えると、この定義には一つ、大きな問題があります。再現性がないのです。日々、採用のコンサルティング業務をしていると、企業が本当に知りたいのは「一部の天才がいるかどうか」ではありません。
・この人は、どんな行動を取りやすいのか
・どんな場面で力を発揮しやすいのか
・環境が変わっても、再現性をもって動けるか
つまり、行動特性としての才能です。
この観点で見ると、「才能=スキル」や「才能=成果」では不十分。成果は環境や運の影響を大きく受けるからです。そこでしっくりくるのが、私たちパフも推奨している「才能」の定義です。
才能とは、ついついやってしまうことやってよかったと自分が思えること
「ついつい」という言葉には、意志や努力を超えたニュアンスがあります。
・頼まれていないのに確認してしまう
・気づくと計画を立てている
・人が困っていると声をかけてしまう
・最後までやり切らないと気が済まない
これらは、エントリーシートにも表現しにくかったりします。でも、仕事のシーンでは確実に価値を生む行動です。重要なのは、本人が「頑張ってやっている」という感覚が薄いこと。つまり、高負荷ではないのに、行動が継続する。これが重要なのです。
僕自身の才能は、かなり地味です
では、自分はどうか。
正直に言うと、僕は昔から「才能がある人」ではありませんでした。
スポーツ万能な友人。
圧倒的に頭のいい同級生。
人生の節目で、そういう存在に出会うたびに
「あ、自分はこっち側じゃないな」と思ってきました。
天性の筋力もない。
瞬発力もない。
勉強も努力しないと点数が取れない。
一気に突き抜ける何かもない。
だから10代の頃に、一つだけ決めたことがあります。
簡単にあきらめないで続けること。辞めないことだけは、負けないでいよう。
ちょうど私が小学6年生の頃、プロ野球ではオリックスブルーウェーブのイチロー選手がシーズン200本を記録し、時の人となりました。イチロー選手は天才と称されますが、実は究極の努力家であり、日々の練習やルーティンを大切にしている方です。野球少年だった私はイチロー選手のその実直なスタンスに憧れて、憧れて、憧れて、コツコツ積み上げていく大切さを自分の生きる糧にしようと決めたのです。
令和のスーパースターは大谷翔平選手ですが、僕の中でのスーパースターは、まぎれもなくイチロー選手です。彼がいなかったら今の自分の根っこはないぐらい、とても影響を受けています。社内では「田代さんって職人だよね」とか「こだわりを追求する」など、色々なコメントをいただきますが、僕の根幹にあるのはイチロー選手なのです。
大学時代のアルバイトも、部活も、コミュニティも。そして新卒で入社した株式会社パフも、気づけば20年も在職しています。特別な覚悟があったわけではありません。ただ、「続ける」という選択を、何度も何度も繰り返してきただけでした。
そうそう。最近取り組んでいる業務外でのウェルビーイング学習も同じかもしれません。毎週、テーマを決めて、考えを言語化して、チームのチャットに投稿する。正直、楽ではありません。でも、なぜかやめない。これを才能ワークの定義に当てはめると、腑に落ちます。
・ついつい続けてしまう
・続けた後に「やってよかった」と思える
ああ、これが自分の才能なのか、と。
才能は「派手さ」より「安定感」
採用の現場で、派手な実績を持つ人が必ず活躍するとは限りません。
・コツコツ続けられる人
・ブレずに行動できる人
・環境が変わっても自分の癖を活かせる人
才能を「一発の強さ」ではなく「行動の安定感」で捉える。9月に退任した株式会社パフの創業者・釘崎さんは、入社時ポンコツだった私を耐えて、耐えて、耐え抜いて育ててくださいました。もし20年前に戻れるなら、こう言うかなと思います。
「釘崎さん、自分、辞めずに続いていますよ。少しですけど貢献しています」って。
派手じゃなくていい。
スーパーマンじゃなくていい。
「ついついやってしまう」
その癖こそが、あなたが社会で価値を発揮する軸になる。少なくとも僕は、継続力という才能に、今はちゃんと胸を張っています。
そして、これからもまた、ついつい、続けていくのでしょう。