1997年10月8日、午後9:30頃(時間はかなりあやふやな推測)。
銀座8丁目の「やぐら茶屋」という居酒屋で、かつてのリクルート時代の先輩
ムライさんと久々に酒を酌み交わしていました。
ム : 「なんだ、クギサキ。じゃー、おまえ会社作れよ!」
釘 : 「ま、まーた、ムライさんは他人事だと思って簡単に言いますねー」
ム : 「ちがうって、クギサキ、お前は会社作って、自分でやっていけるだけの
人間なんだって」
釘 : 「いや、ちがうって、ムライさん。ボクはそんな大した人間じゃなくて…」
ムライさんからいとも簡単に「会社作れ」と言われて、むしろ自分はどれだけ
頼りなく情け無い人間であるかということを、グダグダと説明を始めたのでし
た。
そして…
釘 : 「ムライさんさー、俺ー、兄貴のひょんなコネでリクルートで働きはじめて
そんでもって、その後、いくつかの会社を転々としてきたんだけど、今振
り返ってみると、いろんなドラマがあったなー」
ム : 「おー、お前、よく、あの小さな会社に飛び込んでいったよなー…。
正直言って、ああいう生き方ができるお前がうらやましかったよ」
釘 : 「いやー、無鉄砲というかねー。勢いだけで、何にも考えてなかったんだよ
なー、あの頃は…」
ム : 「自己分析もなーんにもなかったよな」
釘 : 「リクルートの後、小さなソフト会社に5年、でかいコンピュータ会社に1年。
そして今の会社に7年…。
考えてみたら、オレ結構苦労してきたけど、無駄な経験ってひとつもない
なー。ぜーんぶ、今の自分にキレイにつながってますよ。
まさに、偶然の産物。結果オーライっていうやつですよ」
ム : 「いや、クギサキ、それは違うな」
釘 : 「え?」
ム : 「結果オーライなんかじゃない。お前がお前自身の力で、結果をオーライに
してきたんだ。お前は結果をオーライにできるやつなんだ」
釘 : 「はぁー、そ、そうっすか」
ム : 「そうだよ。
クギサキさー、お前が会社作ろうと思ってるんだったら、迷わず作ればい
いよ。だいたいお前はリクルートやめて、その、ちっぽけな会社に入った
ときから、すでに独立してるようなもんじゃねーか。
そんで結果をすべてオーライにしてきたんだろ?」
釘 : 「そ、そういわれればそうかも…」
ム : 「クギサキさー、やってみろよ」
……
このムライさんの 『 お前は結果をオーライにできるやつなんだ 』 の一言は
ズシーッと効きました。
それまでボクは、いろんな劣悪な環境や修羅場をくぐりながら仕事をこなして
きて、それなりの結果を出してきました。
が、それは、いろんな人たちの支えがあったり、ラッキーが重なったりして出
来上がったもので、自分の実力でやってこれただなんて、これっぽっちも思っ
た事がなかったんですね。
ところが、ムライさんのこの一言で、勇気がフツフツと湧いてきて…。
釘 : 「ムライさん、オレやってみようかな…」
ム : 「おーやれやれ!でもなー、クギサキ、お前が会社を作って成功するため
には、絶対守らなければならない条件がひとつだけある」
釘 : 「え、な、なんすか?」
ム : 「カミさんへの説得だ」
ム : 「カミさんに誠意を持って独立を説明し、そして許しをもらい、さらには、
独立を進めるにあたって、カミさんの協力を最大限得ることだよ」
釘 : 「え゛~~!」
自慢じゃないけど、クギサキくん、九州男児の端くれであり、女房にひれ伏し
て協力を仰ぐだなんて…。
想像しただけでも、ゾッとしていたのでありました。
(次回、ひれ伏すのか!…つづく)
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