釘さんの100の出会い プロフィール
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  <第129話> 「新卒一期生 古川明子の巻」   2007/06/18  
 
「す、スンマセン、遅くなりました!」(どどどどどどど)。
「ど、どこに座ればええんでしょうか?」(きょろきょろきょろ)。
「あ、こ、ここでえぇんですね?」(どさっ)。

会社説明会のとき、遅刻して事務所に飛び込んできた、そそっかしい関西弁丸 出しの女子学生。それが本日の登場人物、古川明子(以降、フルカワ)である。

フルカワのパフへの志望動機は、応募者のなかでもズバ抜けていた。「絶対わ たしはパフに入ってやるっ!」という意欲をひしひしと感じた。並々ならぬ熱 意に圧倒された僕は、気がつけば内定を出していた。

2000年7月31日。内定者研修という名目のパフでの勤務が翌日から始まる。フ ルカワの自宅は大阪だったため、会社でマンスリーマンションを契約し、一時 的にそこに住まわせることにしていた。1か月分の荷物を大きなスーツケース に詰め込んで、フルカワはやってきた。

見るとスーツケースのほかに、ギターケースのようなものをぶら提げている。

「おいフルカワ、そのケースには何がはいってるんだ?」

「こ、これですか? これは、サンシンいうんです」

「三振?」

「い、いえ、三線(さんしん)ていう、沖縄の三味線です。大阪を出発する時 に見つけて、どうしても欲しくて、つい買ってしまいました」

「へー、でも、どうしてわざわざ東京まで持ってきたんだ??」

「社長が、あさっての歓迎会で一発芸を披露しろって言うたからやないですか」

「お、そいつを弾くのか、そりゃすごい!」

そうだった。8月2日に、当時のパフのお客様もお呼びしたうえで、パフの初 の内定者たちのお披露目会を催すことにしていたのだ。そして僕は、内定者た ちに、『一発芸』を用意しておくように言い渡していたのだった。

20人以上のお客様が集まった歓迎会の座敷で、フルカワは、座布団に正座し、 三線を抱え、曲を奏で始めた。決して上手くはない。途中でつっかえつっかえ の、たどたどしい演奏だった。

しかし、なぜか心にジーンとくる演奏だった。曲目は「島歌」だった。今でも 僕は、この日の「島歌」のメロディが耳の奥に残っている。と同時に、フルカ ワの、顔を赤らめながら演奏している必死な姿が、今も脳裏に焼き付いている。

フルカワが、その存在感を一気に高めたのは、住友スリーエムへのドタバタ営 業のときだった。このコラムの116話と117話「住友スリーエムの永田さん」に 詳しい顛末を書いてあるが、フルカワがいなければ、この永田さんとの素敵な 出会いはなかったわけだ。

もうひとつ、フルカワの恐るべき才能を開花させた出来事がある。それはパフ の伝統的なイベント『キミは就職できるか?』での出来事だった。

なんと僕はフルカワを、このイベントの総合司会に抜擢したのだった。銀座中 央会館(現銀座ブロッサム)という大ホールに、500人近い学生を集めたイベ ントである。フルカワの喋りは一種独特で、相手を引き寄せる魅力がある。関 西弁というのもあるのだが、喋りのテンポが軽快&軽妙で、洒落が利いていて、 なおかつ多少の色気もある。きっと上手くいくと思ったのだ。

そしてフルカワは期待以上のことを、いや僕が想像すらしなかったことを、見 事にやらかしてくれた。

なんとステージ上で、学生に対して、「ええですかー、私と一緒にやってくだ さいよー、手を高く挙げてー。いーち、にー、さーん、ダーーっ!!!」

観客席でその様子を見ていた僕は、一瞬自分の目と耳を疑った。まさか、何百 人もの学生を目の前にして、猪木の真似をして叫ぶとは…。学生たちも、まさ か就職のイベントで、猪木の叫びをやらされるとは思ってもいなかったであろ う。フルカワアキコ、恐るべき内定者である。


そんなわけで、僕はフルカワの正式な入社を、とても楽しみにしていた。間違 いなく、就職情報業界に大きなインパクトを与える人材に成長してくれると信 じていた。

しかしフルカワは、入社式を目前にした3月中旬のある日、突然内定辞退を申 し出てきた。僕は、ただただ驚くばかりだった。あれほどパフへの情熱を燃や していたのに。つい先日、破天荒な司会を務め上げたばかりだったのに……。

きっと様々な不安、戸惑い、悩みが、彼女の心の中を駆け巡っていたのであろ う。外見が明るく威勢がいいだけに、僕は彼女の心の揺れに気がつくことがで きなかった。本当にショックだった。雨の日の夜、日本橋の食堂で、数時間か けて話をしたのだが、フルカワの決心を覆すことはできなかった。

パフの正社員にはならなかったものの、フルカワが永遠のパフ新卒一期生であ ることに変わりはない。今回のコラムを執筆するにあたり、フルカワと久々に メールのやり取りをした。以下は、彼女から送られてきたメールの一部抜粋で ある。
お久しぶりです。お元気ですか?
パフのサイトと社長の日記、拝見していますよ〜ヒヒヒ。
素敵な社員が増えて、どんどん大きく豊かになっていくパフ、
まぶしいです。

フルカワは3年ほど前になんとか結婚しました。
さらに去年には可愛いおサルさん(メス)を産み落としました。
このあたしが母親です。・・・人生は謎だらけです。

(フルカワの実名掲載の件)答えは「OK」です。
就職活動をがんばる学生たちにとって、
良き反面教師になれば幸いです。
「こうなったらあかんよ」と。
社長の思うまま書いて下さって結構です。ハイ!

本格的な夏がやってきます、どうかご自愛ください。
ハチャメチャな文面ご容赦ください。ブヒ。

フルカワアキコ
メールには、小さな可愛い赤ちゃんを抱えた、巨大なフルカワの写真が添付さ れていた。昔ながらの洒落の利いたメール文書と写真。思わず苦笑してしまっ た。そして、できることならもういちど、一緒に汗をかいてみたいと思った。

ということで82番目の出会い。新卒一期生のフルカワこと古川明子との出会 いでした。
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