釘さんの100の出会い プロフィール
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  <第85話> 「新興証券会社の社長と社員、二人のMさん(前編)」   2006/07/31  
 
会社(パフのことです)を立ち上げて数ヵ月後、ディーブレイン証券という前の年にできたばかりの証券会社とお付き合いすることになった。

ディーブレイン証券は、未上場企業の株式を専門に取り扱う証券会社として設立された会社である。

当時のパフは、就職サイトへの広告掲載料を収入源とするビジネスモデルだったので、サイトの存在を学生に広く知らせ、有名にしなければならなかった。

有名にするためには資金が必要だ。DMを学生の自宅に送ったり、ポスターを大学に掲示するための費用だ。名簿代、郵送費、カタログやポスターの制作費、就職サイトの制作費なども含めると、最低でも3千万円ほどの現金が必要だった。

しかし、パフの資本金はわずか1千万円。この1千万円も、数ヵ月後にはほとんど底をついたような状態だった。

パフが設立された1997年から1998年にかけての日本経済は混迷を極めており、多くの金融機関は、中小企業への新規融資を行うどころか「貸し剥がし」といって、貸し出したはずのお金でさえも無理やり回収するという、酷いことを平気でやっていた。このことにより、多くの中小企業は倒産や廃業に追い込まれた。

そんな状況の中、パフのような零細企業が、銀行からお金を借りられるはずがない。

さて、困った。パフのビジネスを行うためには3千万円の資金が必要。が、手元にはほとんど資金がない。銀行もあてにならない。

そこで浮上したのが、ディーブレイン証券を利用しての資金調達だった。

ディーブレイン証券を利用しての資金調達とは?

ものすごく簡単に説明すると、機関投資家や一般の個人投資家から資金を集めるのである。パフの新株を発行し、その新株を投資家の皆さんに買ってもらうのである。いわゆる「公募増資」という手法だ。

上場企業であれば資金調達の手段として普通に行っている公募増資なのだが、未上場企業では通常考えられないことだった。

この通常考えられない未上場企業の公募増資を行うことを可能にしたのが、ディーブレイン証券が創り出した市場と仕組みだったのだ。

ディーブレイン証券自身も、いわばベンチャー企業。この新しい資金調達の仕組みが成功するかどうか、かなりハードルの高いチャレンジだった。

そして、この新しい仕組みを利用するパフにとっても、大きなチャレンジ…というよりも、右も左もよくわからないなかでの、「賭け」のようなものだった。

この「賭け」に一緒に取り組んでくれたのが、ディーブレイン証券の初代社長であるMさんと、若き社員のMさん。そう、二人のMさんだった。

(後編に続く)
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