釘さんの100の出会い プロフィール
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  <第77話> 「求人サイト『登龍門』で出会った人々(その7)」   2006/06/05  
 
前回のコラムに登場したリクルートの元社員のO君。『登龍門』の販促のためのFAX一斉配信の仕組みを提供してくれた人物だ。

前回、『なんといってもOくんの一番の功績(?)は、僕にある人物を紹介してくれたことだろう』と書いたが、その『ある人物』との出会いが、今回のお話しだ。

『ある人物』というのは、株式会社オプトの社長である鉢嶺さんのこと。

オプトといえば、いまやインターネット広告の業界をリードする企業として知らない人はいないくらい有名な会社だが、当時(1995年)は設立2年目の、 社長の鉢嶺さんとアルバイトしかいない、超零細ベンチャー企業だった。

鉢嶺さんは、リクルートのOくんからの紹介で、僕に営業訪問してくれた。

オプトは当時、自社が独自に集めた企業や店舗のFAX名簿に対してDMを配信し、クライアントの新規顧客の開拓や商品のプロモーションを支援するという、いわゆる「ダイレクトマーケティング」のビジネスを展開していた。

企業の人事部リストも数千社分を保有しており、僕はすぐに、オプトに(というよりも鉢嶺さんに)DM配信をお願いすることにした。

鉢嶺さんに初めて会った時のことは、いまでもよく覚えている。

鉢嶺さんは目がクリクリっとしており、笑顔がとても爽やかな青年だった。営業をしに来ているのに、売込みらしい売込みはほとんどなし。僕が運営していた登龍門の話しを、とても熱心に聞いてくれた。

「へーっ」とか「面白いですねー」とか「スゴイですねー」とか、子供のような好奇心に溢れたリアクションで僕の話しに食いついてくる、鉢嶺さんの純粋無垢な表情がとても印象的だった。

そして、ニコニコした笑顔の合間にみせる真剣な表情や、会社の将来像を語るときの実に楽しそうな表情に、僕はすっかり魅せられてしまった。

正直に言うと、オプトが保有していた企業リストに魅力があったわけではなく、鉢嶺さん個人に大きな魅力を感じて、僕はオプトへの発注を即決で決めたようなものだった。

商談も終わり、雑談をしていたときのこと。鉢嶺さんがポツンと、「新卒採用かぁ…。なんだか面白そうですね。僕の会社でもやってみようかなぁ…」ともらした。

登龍門の売上を少しでも上げたかった僕はすかさず、「お、いいですね。やりましょう、やりましょう! きっと優秀な学生が応募してきますよ」と、調子のいいことを並べ立てたのだった。

内心は「やってみなきゃ、応募があるかどうかなんて、実際のところはわかんないけどね」と思っていたが、そんなことは口には出さず、とにかく鉢嶺さんにその気になってもらうために、新卒採用の意義を、あれこれと唱えた。

鉢嶺さんは少し考えた後、

「よし、やりましょうか。クギサキさん、じゃ、よろしくお願いしますね!」

と答えてくれた。オプトの初めての新卒採用が決まった瞬間だった。

わざわざ営業訪問してくれた社長に、こっちの商品を買わせてしまったのだから、考えてみたら失礼な(というよりひどい)話しだ。

これが鉢嶺さんとの初めての出会いの日の出来事。

僕は鉢嶺さんに『登龍門』の企業向けプロモーションをお願いすることになり、鉢嶺さんは僕に、『オプト』の初めての新卒採用をお願いすることになった。

この日の「出会いと契約」が、その後とても大きな意味を持つことになろうとは、僕も鉢嶺さんも予想だにしなかった。 

(長くなってしまうので、続きは第78話にて)
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