釘さんの100の出会い プロフィール
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  <第45話> 「社内販売を一緒に画策した女性社長Aさん (後編) 」   2005/10/03  
 
「A社長!神田営業所の中だけだったら、なんとかなるかもしれません。
どうですか?」。

A社長にお願いされた「毛皮の社内販売」を営業所長に何のことわりもなく安
請け合いしてしまった。

帰社後、所長に拝み倒してお願いした。

・・・実は、ここらへんの記憶が曖昧なのだが、所長とのやりとりであまり揉
めたという思い出がない。

おそらく、わりかしスンナリと、所長は「毛皮の社内販売」を許可してくれた
のだと思う(いや、それか思い出したくもないようなバトルが繰り広げられ、
僕の記憶から削除されているだけなのかもしれない、笑)。

営業所長というのは、いわば一国一城の主。特に当時のリクルートの営業所長
は、所内のことであれば、ほとんど一人で決めることができた。自由にできる
お金もかなりあったのではないかと思われる。一部上場企業の部長くらいの決
裁権はあったのではないだろうか。

話は「毛皮の社内販売」……。

いくら所長が許可してくれたといっても、誰も、こんな物好きでお人よしの企
画を手伝ってくれるわけがない。結局、事前の準備やチラシ作り、プロモーシ
ョン活動の一切合切は、僕がやることになった。

当時の神田営業所は、リクルート以外にも、関連会社が2社(フロムAとか)
同居していた。全部あわせると従業員が50~60人くらいはいた。しかも、
全体の半数以上は女性。なので、プロモーション活動には、かなりのヤリガイ
があった。

「○○さんって、ホントいつみても素敵ですよねぇ。ところで、来週の水曜日
なんですが、僕のお得意さんの会社が毛皮の即売会やるんですよー。なんと神
田営業所の会議室で!!○○さんにお似合いの毛皮やアクセサリーもきっとあ
ると思いますよー」てな感じで触れて回っていた。

さて、ついに社内販売の日がやってきた。所長に許可されている時間は、お昼
休みの一時間のみ。

11時くらいに営業所のビルのまえに、毛皮やアクセサリーを積んだトラック
が横付けされた。A社長も乗っている。僕も一緒になって毛皮の搬入を手伝い、
「売り場」の設営に汗を流した。

そして12時がやってきた。
事前のプロモーションが功を奏したのか、それとも季節外れの毛皮の社内販売
が珍しかったのか(そもそも社内販売そのものが初の経験だった)、多くの人
たちが覗きに来てくれた。

でも「しめしめ」と思ったのは束の間。来場者はいっぱいいるものの、購入客
が誰もいないのだ。ほぼ全滅だった。

約束の終了時間、午後1時になった。

結局、この日の売上げは2万円也。そのうち1万円は、僕の同僚(やはり当時
大学生)が彼女宛に買った襟巻き。

もう1万円は、僕が買った襟巻き(ただし、僕にはプレゼントする彼女がいな
かったのだが)。

会議室いっぱいに吊るした毛皮は、ひとつとして売れなかったのだ。後片付け
をするA社長を見るのが忍びなかった。

でも、A社長との信頼関係は、この一件でさらに増すことになり、小さな受注
をその後もポツポツとV社からいただくことになったのである。一方で社内販
売失敗の罪悪感は、ずーっとつきまとっており、この話題はその後2人の間で
交わされることは、ついぞ一回もなかった……。

ということで、今回はちょっとほろ苦い思い出のA社長との出会い。34番目
の出会いでありました。

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