釘さんの100の出会い プロフィール
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  <第39話> 「神田営業所長のWさん   2005/08/22  
 
Wさんは、1983年当時、僕が勤めていた日本リクルートセンターの神田営
業所の所長さん。

当時まだ30歳ちょっと。30歳のビジネスマンなんて、今の感覚でいえば、
「ぺーぺー」もいいところ。つまりは若僧だ。

でも当時の僕から見れば、Wさんが若僧だなんてとんでもない。とても貫禄の
あるスゴイ社員だった。

Wさんは北海道出身。大学は出ておらず、高校を卒業してすぐに就職した。学
歴社会である日本では、「高卒」というととかく低く見られがち。しかし、そ
んなこと、とんでもない。

Wさんは、東大卒の他の営業所の所長や同年代の課長クラス連中の誰よりも、
優れた識見、知識、人望を持っていた。僕はWさんのことをいつも「かっこい
いなぁー」と思っていた。

遊びすぎて月末にお金がなくなると、Wさんのところに行き、「すみません、
1万円お借りしてもいいですか?」と給料の前借みたいなことをやっていた。

「まーったく、しょうがない奴だな(笑)」といって、大きな財布からサッと
一万円札を取り出す姿がまたカッコよかった。

僕がとある上場企業の社長にアポを取ってしまったときの話である。当時のリ
クルートの営業方針は、とにかく「トップアプローチ」。人事部長や人事課長
や、ましてやヒラの採用担当者と話をするくらいなら、壁に向かって話をした
ほうがマシだ!と教えられていた。
なので、僕はいつも「社長いらっしゃいますか?」と電話をしていた。それで
とったアポが、上に書いた上場企業社長へのアポである。

そのことを周囲の先輩に話したら「え、おまえ上場企業の社長にアポもらっち
ゃったの!? どうすんだ?」と言う。

どうやら「トップアプローチ」というのは、中小企業を前提とした話だったら
しいのだ。

確かに20歳ちょっとのペーペーの営業マンが、上場企業の社長に対してアポ
をもらい営業しに行くなんて、ちょっと失礼な話だ。

そこでWさんに泣きついて一緒に行ってもらうことになった。

そして訪問日。ここでまたWさんに感動してしまう。上場企業の社長(たぶん
60歳くらいだった)を相手に、ムチャクチャ堂々としているのだ。ごく普通に
会話しているのだ。話題も豊富だし、社長もフムフムと笑顔で頷いている。

すげー!かっこいい!!

こんなビジネスマンに自分も将来はなりたいものだ。そう最初に思わせてくれ
た社会人がWさんだった。

ちなみにWさんは現在、秋田県の第三セクターの代表者をやっている。2年前
にいちどお会いした。当時と変わらず若々しい颯爽とした姿だった。

ということで、31番目の出会いは、日本リクルートセンター神田営業所所長
のWさんのお話でした。

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