自転車操業物語 プロフィール
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  第20話    「三菱商事のIさんとの出会い」    
1998年8月下旬。

二言目には“お話は理解できるんですけどね…”という断り文句を、毎日の
ように聞かされ落胆しきっていた頃、Tさんが一件の訪問の約束を取り付けて
いた。

T  : 「しゃちょぉぉ〜、すごいところにアポ取れましたよ!」
釘 : 「え?どこですか?」
T  : 「最大手総合商社の三菱商事ですよ」
釘 : 「へぇー、よく取れましたねー。んじゃ、ボクも一緒に行きましょうか」

これが、運命的な出会いの序章だった。

数日後、ボクとTさんは、丸の内の古めかしいビルにある三菱商事本社の人事
部に向かった。

先方は、2名の若手人事マン。
とても丁寧で低姿勢な挨拶をしてくださったのが印象的だった。

ボクは、自分自身の経歴やパフという会社の成り立ち、これからやりたいこと
などを、できる限りわかりやすく、冷静に、しかし情熱を込めて説明した。

この2名の人事担当者、名前はSさんとUさん。かなりの関心を示してくれた
ようだった。

釘「率直なところ、パフに協賛していただける可能性はありますか?」

Sさん : 「うーん…。正直なところ五分五分ですね。我々レベルではなんとも
      即答はできないんですよ。上のものにも相談して、また後日連絡を差
      し上げます。」

うまくいくかどうかは、まったくわからなかった。
と、いうよりも、うまくいってほしいという願望は極めて大きかった。しかし、
「またダメなのかな」というあきらめの気持ちも一方ではあった。

ほどなく、Sさんから電話が入った。

Sさん : 「先日はありがとうございました。早速なんですが、我々の上のものが、
      お話をお聞きしたいと申しておりますので、恐れ入りますが、もう一
      度ご足労いただけませんか?」

なんと採用の責任者が会ってくれるらしい。
ボクとTさんは、ビビりつつも、指定された日時(朝9時過ぎのとても早い時
間だった)に、再度丸の内に訪問した。

「きっと、眼光の鋭い、切れ者っていう感じの人が出てくるんだろうなー」

などと想像しながら、会議室で待っていた。

5分ほど待っただろうか。
ノックして入ってきたのは、目がクリッとして笑顔がとても爽やかな、30代
半ばくらいの男性だった。

その人は、ちょっと早口に「あー、どうもお待たせしましたー」と言いつつ、
非常にフレンドリーに名刺を差し出してきた。

「どうも今日は朝早くからご来社いただき恐縮です。
 私は三菱商事で採用を担当しております人事部の“I”と申します」

驚いた。
Iさんは、とてつもなく腰が低いのである。単にマナーで腰が低い、というだ
けではない。
ボクたちのことを、単なる業者という感じではなく、「大事なお客様」として
対応してくださっており、そのことがコトバや態度の節々に表れていたのである。

ボクとIさんは、お互いの経歴や、最近の学生の就職事情や、就職情報会社各
社の話などなど、20分ほど雑談を交わした。

Iさんは、この年の春まで英国三菱で勤務をしていた。日本での新卒採用の仕
事は久々であり、責任者として採用を行うのは初めてのことであったのだ。

ボクとIさんとが会うのは、この日が初めてなのだが、ずっと前にも会ってい
たような、そしてこれからもずっとお付き合いしていくような、そんな親しさ
を覚えた20分だった。

結局仕事(協賛の売り込み)の話は、後半で多少したくらいだ。
ほとんどが、雑談を中心とした自分の話や、パフのこれからの話だけだったと
思う。

Iさんは、「わかりました。近いうちに必ずお返事します」とにこやかに言
ってくださり、この日の商談(?)を終えた。

ボクとTさんは、なんとなくうまくいきそうな予感を胸いっぱいに感じながら、
事務所へと帰っていった。

「近いうちに返事…か。明日あたり、いい返事が来るかもしれないな…」

ところが……。
一週間たっても返事はこなかった。

大きな期待が一転。不吉な予感へと変わっていった。

(さてさて、どうなりますことやら…つづく)

 
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